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YouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」の葉一さんが贈る、13歳へのメッセージ「夢は変わっていい、まずは始めることが大切」

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一人ひとりが自分にあった進路を選べる社会へ。

偏差値というたった一つのものさしだけを基準にするのではなく、まわりの大人の声にただ流されるのでもなく、一人ひとりが“自分の人生の主人公”として、意志を持って将来を選び、切り拓いていってほしい。サイル学院高等部は、そう考えています。

とはいえ、社会に飛び立つ前の10代にとって、進路選びは難題です。「将来、どんな道があるのか、想像できない」「何を基準に進路選びをすればいいのか、わからない」というのが本音だと思います。進路選びは、正解のない問い。迷いがあって、当然です。

一方で、いま社会の第一線で活躍しているビジネスパーソンや、自らの能力を発揮し、いきいきと生きている大人たちにも、みなさんと同じように進路に迷った10代の日々があったはず。彼らは、どんな学生時代を過ごし、どのように進路を選択して、今に至っているのでしょうか。彼らが持つ十人十色のヒストリーは、進学や就職など、今岐路に立っているみなさんの背中をそっと押してくれるはず。

そう考えた「13歳からの進路相談(すばる舎)」著者・学院長の松下は、各界で活躍する方々をお招きし、13歳の進路選びをテーマに語り合うことにしました。題して「いまを生きる君たちへ『もし私が、13歳なら』」。二人目となる今回のゲストは、教育系YouTuberとして活躍している葉一さんです。

葉一さん

【教育系YouTuber 葉一(はいち)さん】

1985年、福岡県生まれ。高校時代の恩師の影響で教師を目指し、東京学芸大学へ進学。教材の営業職、個別指導塾の講師を経て、2012年6月よりYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」を開設。丁寧な板書とわかりやすい解説、兄貴的なキャラクターで人気を博す。現在は動画配信に加え、Webサイト「19ch.tv(塾チャンネル)」でプリントを無料配布している。チャンネル登録者数は185万人超(2022年12月時点)。TBS「情熱大陸」やNHKへの出演経験もある、注目の教育イノベーター。

教師嫌いだった自分を変えてくれた恩師

 松下​​​​​​​

葉一さんは、幼い頃はどんなお子さんでしたか?

葉一さん 葉一さん

平凡な、普通の子でした。ただ、妹に障がいがあったことは周りと違ったところかもしれません。子どもながらに「いいお兄ちゃんでいてほしい」という母からの期待を感じて、「しっかりしなきゃ」と思っていたのを覚えています。

小学生のときは楽しい日々だったのですが、中学で一気に暗黒期に突入。いじめられていたんですよね。生徒からいじめられるだけじゃなく、ある特定の教師からも、からかわれる対象だった。クラス全員の前でぽっちゃりした僕の体形をいじって笑ったことがあって。そこから一気に教師が嫌いになりました。正直「教師も大人も、みんな敵だ」と本気で思っていましたから。

松下 教師に不信感を抱いていた葉一さんが、教育の道を志したのはなぜですか。

葉一 高校で出会った恩師のおかげです。数学の先生なんですが、出会いのインパクトがすごくて。自己紹介の挨拶で「お前らに好かれるつもりはないから」って言ったんですよ(笑)。

ただ、いざ授業を受けてみると、板書がきれいで、ものすごくわかりやすかった。苦手だった数学が理解できるようになって、徐々に楽しくなっていったんです。休み時間に自分から話しかけるようになり、相談にも乗ってもらって。いつのまにか信頼できる存在になっていたんですよね。教師嫌いだった僕がですよ? あれだけひねくれた自分を変えてくれるなんて、教師って実は、すごくおもしろくて魅力的な職業なんじゃないかと感じました。それで学芸大を受験したんです。

どんな出会いにも意味はつくれる

 松下

学芸大に入学されて教員免許を取得。でも、学校の先生にはならなかったんですよね?

葉一さん 葉一さん

はい。教育実習に行ってみてわかったのは、現場が激務すぎて、自分が目指す教師のあり方を実現するのは難しいということ。加えて、大学を出てすぐに先生になるよりも、まずは社会に出たほうがいいと感じました。修行のつもりで、ひとまず3年は外で働こうと。どうせ修行をするなら厳しいほうがいいと教材の営業マンになりました。

営業所の所長には本当にお世話になりました。自分のダメな部分をたくさん指摘してもらえましたし、「仕事は長距離走なんだから、頑張るときと気を抜くときのメリハリをつけなきゃ続かないよ」と教えてもらった。

高校の恩師が第二の父親なら、所長は第三の父親です。ただ、売れない営業マンだった自分がようやく自信をつけはじめた矢先に、持病が悪化してドクターストップがかかってしまった。そこで道半ばで、塾講師に転職をします。

松下 高校の恩師や営業所の所長…葉一さんのターニングポイントには必ず大事な人がいますね。葉一さん自身が、人との出会いを良いものにされてきたんだなと感じます。

葉一 僕は、どんな出会いにも意味はつくれると思っています。高校の恩師や所長は、人生の出会うべきタイミングで出会って、その意味が大きくなりました。ただ、どんな人との出会いにも意味はあると考えているんです。

もちろん生きていく中で、合わない人もいますよね? でも「合わないな」と思ったときに、「なんでそう思ったんだろう?」「この人はなぜ、こんな態度をとるんだろう?」などと分析していくと、自分のことをより深く知れるんです。そういう機会をもたらしてくれた人との出会いは、良い出会いだと捉えられますよね。その人を好きになることは難しいですけど(笑)

こう考えるようになったのは、いじめられた経験があるから。いじめられた経験って、絶対いいことじゃない。もう一回人生をやりなおせるなら、経験しない道を選びたいです。でも過去は変わらない。いじめられた事実は変えられないんです。それなら、「いじめられたことを、ただただつらい、しんどい経験」と捉えるよりも、「あの経験があったから今がある」と捉えたほうがいいなって。意味づけることで、過去の捉え方は変えられると思っています。もちろん、いじめは正当化できるものではないですけどね。

所得による“教育格差”を変えたい

 松下

塾講師を辞めてYouTuberになったのは、なにかきっかけがあったんですか?

葉一さん 葉一さん

塾講師を3年やって、このまま続ければ出世街道に乗るだろうという手応えがありました。ただ、親の所得格差と教育の格差がダイレクトに結びついてしまっている現実を目の当たりにして、「この現状を変えたい」と思うようになったんです。

松下 教育格差を目の当たりに…?

葉一 はい。たまたま私が担当する生徒が、母子家庭のお子さんが多くて。保護者面談をしていて「夏期講習はどうしますか?」と聞くと、「講習に通わせたいし、子どもも通いたいと言っているけど、月謝を払うだけで精一杯で」と言われて。なかには、預金通帳を見せて、「先生、ごめんね」と謝るお母さんもいました。

子どもは勉強したいし、親も勉強させたい。でもお金が障壁になってしまう。子どものやる気って奇跡的なものだと思っていて、やる気ってすぐ消えちゃうし、人生でそう何度もあることじゃない。そんな奇跡的な瞬間をお金がストッパーになっている現実が、すごくもどかしかったんです。そこで子どもが無料で学べる場をつくりたいと思いました。

所得による教育格差は仕方ない。たしかに、そうかもしれません。でも仕方ないで済ませてしまったら、永遠に変わらない。一度きりの人生なんだからチャレンジしたいと思いました。

松下 YouTuberとして食べていけるかどうかは、気になりませんでしたか?

葉一 もともとYouTubeで広告収入を得られること自体、実は知らなかったんです(笑)。だからチャンネルを開設して1年間は、広告を貼っていなかった。YouTubeでの授業で認知度を上げて、講演会や執筆などで収入を得られたらと考えていました。

収入は得たいですが、この仕事で大儲けしようとは思っていません。そもそも、大儲けしたいと思ったら、今の僕のやり方は選びませんから。最少人数で事業を行って、出ていくお金を小さくすれば、収入は保てます。塾講師での経験から、“なるようになる”という自信はありましたし、そう不安は感じていませんでしたね。

知ろうとする気持ちだけは失うな

 松下

もしも今の知識や経験を持ったまま13歳に戻れたとしたら、葉一さんはどんな進路を選び、どう行動しますか。

葉一さん 葉一さん

おそらく「教育をやりたい」と思うんじゃないでしょうか。それは先生になるということではありません。学校の外にいる教育者として、どんな道があるか模索する気がします。だから、ひとまずいろんな人と知り合って、つながろうとするでしょうね。

13歳だった昔の自分にアドバイスするなら、「知ろうとする気持ちだけは失うな」。学生の自分が知っている世界なんて小さいじゃないですか。まだまだ知らないことがたくさんある。アクションを起こして、自分の世界を広げてほしいです。

松下 葉一さんなら、具体的にはどんなアクションをとりますか。

葉一 僕だったら、インフルエンサー的な先生や教育系のYouTuberにDMを送りまくります。話を聞かせてほしいって。中学生や高校生っていう肩書がついていると、協力してあげたいと思う大人も多いはず。どんどんメッセージを送って、学ぶ機会を得ようとすると思います。

自分のために、自分の人生を生きよう

 松下

最後に、今を生きる、現代の13歳に伝えたいメッセージはありますか。

葉一さん 葉一さん

現代は職業自体、多様化していますよね。今はまだ存在していない職業も、みなさんが大人になるころには、たくさん生まれているはずです。なかには自ら切りひらいて、新しい仕事や職業をつくる人もいるでしょう。

前例のないこと、既存の枠から外れることをすると、足を引っ張ろうとする人が残念ながらあらわれます。そんなとき忘れないでほしいんです、あなたはまわりの人のために生きているわけではないということを。自分自身のために生きてほしいです。

大人の言うことが必ずしも正解とは限りません。自分の頭で考え、やるべきだと思ったら行動に移してほしい。夢を口にすることで応援してくれる人もきっとあらわれます。たいていのことは、やってみなければわからない。やってみてダメなら軌道修正すればいいんです。

僕は「初志貫徹」じゃなくてもいいと思っています。日本人はやり続けることを美徳とする人が多いですが、「やってみて違うと思えば、変えよう」「すぐにやめたって構わない」と思っているほうが、気軽に始められます。進路だって、夢だって、ころころ変わっていい。肩の力をぬいて、前に進んでいってください。

(デザイン:山本 香織、文:猪俣 奈央子)

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この記事を書いた人

サイル学院中等部・高等部 学院長
松下 雅征/Matsushita Masayuki
サイル学院中等部・高等部 学院長

1993年生まれ。1児の父。学生時代は早稲田実業学校高等部を首席卒業。米国留学後、早稲田大学政治経済学部を卒業。やりたいことではなく偏差値で進路を選び後悔した経験から、大学在学中に受験相談サービスを立ち上げ。中高生からの相談数は10万件以上。大学卒業後は教育系上場企業とコンサルティング会社の才流(サイル)で勤務。
2022年、同社の子会社として株式会社サイルビジネス学院を設立し、代表取締役に就任。一人ひとりが自分にあった進路を選べる社会を目指して「 サイル学院高等部(通信制)」を創立。2023年、同校の中等部を創立。著書「 13歳からの進路相談」(すばる舎)。進路選択をテーマにした講演・イベントの登壇実績多数。